
デザインを任されたらまず何をすればいい?デザインの進め方ガイド
初めてデザインを任された時、嬉しい気持ちと同時に「何から手をつければいいんだ!?」って、少しパニックになってしまいますよね。特に、駆け出しのデザイナーさんや、はじめて自分で案件を受注したフリーランスの方は、戸惑うことも多いと思います。でも、大丈夫!デザイン制作には、美味しい料理を作るのと同じように、美味しくなるための「段取り」や「レシピ」があります。まずはしっかり準備をするところから始めていきましょう。
1. 事前調査からはじめよう
本格的なデザイン作業に入る前に、まずはクライアントのこと、そしてそのライバルたちのことを知る「事前調査」からスタートです。これは、いきなりデザイン案を考えるよりも、ずっと大切なステップです。
競合他社を調べておく
クライアントにはどんなライバルがいるのか?競合の商品やサービス、Webサイトをいくつか見てみましょう。
- どんなデザインの雰囲気?(シンプル、ポップ、高級感など)
- どんな情報を発信している?
- どんな強みや特徴がありそう?
これを調べておくだけで、「この業界ではこういうデザインが一般的なんだな」「逆に、こういうアプローチはまだ誰もやっていないからチャンスかも!」といったヒントがたくさん見つかります。
クライアントのことを調べておく
そして、何よりも大切なのがクライアント自身への理解を深めることです。会社のWebサイトを隅々まで読んだり、SNSをチェックしたりして、以下のような情報を集めてみましょう。
- 会社の規模や設立からの歴史
- どんな理念や価値観を大切にしているか
- 最近、どんなプロジェクトに力を入れているか
- どんな雰囲気の会社なのか
こうした情報を知っているだけで、次のステップである「打ち合わせ」が、ぐっとスムーズに進みます。
2. 打ち合わせ
事前調査が終わったら、いよいよクライアントとの打ち合わせです。ここでデザインの方向性を決める、とっても重要な時間になります。
でも、開始すぐに「では、本件ですが…」なんてガチガチなビジネストークから入る必要はありません。まずは「最近、暑いですね~」くらいの軽い世間話で、お互いの緊張をほぐすことから始めてみましょう。
そして、少し場が和んだところで、「御社のWebサイト、拝見しました!〇〇という取り組み、とても素敵ですね」というように、事前調査で得た情報を交えながら、自然に本題に入っていくのがおすすめです。相手へのリスペクトが伝わって、きっと良い雰囲気で話し合いができますよ。
打ち合わせでは、最低限、以下の項目をヒアリングすることを心がけましょう。
コンセプト / なぜ存在するのか?
そもそも、なぜこのWebサイト(や制作物、サービス)は必要なんでしょうか?誰に、どんな価値を届けたいのでしょうか?ここがデザインの「魂」になります。
差別化ポイント
競合と比べて、何が一番の強みか?「品質」「価格」「サポートの手厚さ」など、アピールしたいポイントを聞き出しましょう。
現状の課題
「今のサイトは情報が探しにくい」「新規のお客さんが増えない」など、クライアントが抱えている悩みや問題点をはっきりとさせます。この課題をデザインの力で解決することこそ、デザイナーの大事な仕事です。
スケジュール
いつまでに何が必要か、具体的なスケジュールをすり合わせます。無理な日程は禁物!正直に「この作業には〇日ほどかかります」と伝え、お互いが納得できる計画を立てましょう。
絶対NGな要素
「デザインはお任せで!」なんて言われることもあるでしょう。ただ、「お任せ」と言われても、「これだけは絶対に嫌だ、というデザインの雰囲気や色はありますか?」と聞いてみてください。「ポップすぎるのは苦手」「赤色は使ってほしくない」など、好きなものを聞くより、嫌いなものを聞くほうが、意外と具体的な答えが返ってきやすいんです。これをやっておくだけで、後の手戻りをぐっと減らせますよ。
3. 情報の整理
打ち合わせが終わったら、持ち帰った情報を整理します。メモをそのままにしておかず、「目的」を明確にするために、自分の言葉でまとめてみましょう。
このデザインの目的は?
- 「まだこの商品を手にとってことのない人に魅力を伝え、購入してもらうこと」
- 「専門的で複雑なサービス内容を、図や導入事例を用いて分かりやすく解説し、企業の信頼性を高めて資料請求の件数を増やすこと」
- 「会社の技術力の高さや働く環境の魅力を伝え、『この会社で成長したい』と感じてもらい、採用サイトからのエントリーを増やすこと」
- 「お店のこだわりや雰囲気を伝え、ディナータイムの集客を強化し、Webサイト経由の予約を増やすこと」
などなど、具体的であるほどデザインに落とし込みやすくなります。
ターゲットはどんな人?
年齢や性別だけでなく、「普段はInstagramで情報収集している」「シンプルな暮らしが好き」など、具体的な人物像(ペルソナ)を想像してみましょう。
どんな場面で使われる?
通勤中の電車でスマホで見る?それとも、休日に家でPCでじっくり見る?使われるシーンを考えると、最適なデザインのヒントが見えてきます。
4. リサーチ
目的とターゲットがはっきりしたら、整理した情報を元に具体的なリサーチに入ります。
- ターゲットや目的を達成するには、どんなレイアウトが効果的?
- どんな色を使えば、伝えたい世界観が表現できるか?
- フォントは、ゴシック体がいい?明朝体がいい?
この段階で、PinterestやBehance、Dribbbleといったデザインの参考サイトを見るのがおすすめです。ただし、ただ「かっこいいな~」と眺めるだけだともったいない!
「なぜ、このデザインは素敵に見えるんだろう?」「このレイアウトは、今回の目的に合っているな」というように、必ず目的と照らし合わせながら、良いと思ったデザインの要素を分析・言語化するクセをつけましょう。
こうしてリサーチした内容を参考にしつつ、独自のデザインの方向性を決めていきます。
5. イメージを共有するムードボード
リサーチして集めた素敵なデザインの画像や、使いたい色の組み合わせ、フォントのイメージなどを、一枚のボードにコラージュしたもの。それが「ムードボード」です。

「かっこいい感じで」「スタイリッシュに」といった抽象的な言葉は、人によって受け取り方が全然違います。でも、このムードボードを見せながら「今回は、こんな雰囲気のデザインにしようと思うのですが、いかがですか?」とクライアントに提案すれば、言葉だけでは伝わらない「雰囲気」や「世界観」を、一瞬で共有できます。
ムードボードの作成は必須ではありませんが、この一手間がデザイナーとクライアントの間のイメージのズレをなくし、「思ってたのと違う…」という悲劇を防いでくれます。
ムードボードの作り方について、詳しくはこちらのサイトも参考になりますよ!
ムードボードとは?初心者でも分かる作り方からデザイン要素までまるっと解説 - Miro
6. ようやくデザインへ
さあ、ここまで来て、ようやく実際のデザイン制作に入ります!
事前調査、打ち合わせ、情報整理、リサーチ、ムードボードでの方向性の共有…なんだか遠回りに感じたかもしれません。でも、このしっかりとした土台作りこそが、良いデザインを生み出すための最も重要なプロセスなんです。
ここからは、Webサイトならワイヤーフレーム(設計図)を元に、だんだんと具体的なデザインに落とし込んでいきます。グラフィックデザインなら、ラフスケッチから実際の形へと制作を進めていきます。
いきなり完璧なものを作ろうとせず、まずは骨格から、そして少しずつ肉付けしていくイメージで進めていきましょう。
デザインの仕事は、ただ見た目をきれいにするだけではなく、クライアントの課題を解決するためのコミュニケーションそのものです。最初は戸惑うことも多いと思いますが、今回紹介したステップを一つひとつ丁寧に踏んでいけば、きっとクライアントに喜んでもらえる、素敵なデザインが作れるはずです。
焦らず、楽しんで、あなたのデザインを形にしていってくださいね。