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デザインの良し悪し、どう判断する?ブランド戦略家の奥野正次郎さん(POROROCA)に伺いました!

文字や配色、余白を綺麗に整えたはずなのに、なんだかデザインが物足りない…と悩むこと、ありませんか?今回は、新刊『選ばれるデザイン』著者の奥野正次郎さんに、デザインの良し悪しを見極める「6つの視点」を取材しました!

Q1. デザインの「なんか足りない」という迷いはどこから来るのでしょうか?

Mana: 文字や配色、余白をきれいに整えたはずなのに、どこか物足りない…という悩みは、初心者だけでなく経験者でもよくありますよね。見た目を整えるだけでは気づきにくい「デザインの落とし穴」とは何でしょうか?

デザインの落とし穴は、大きく2つあると考えています。一つは「過去の成功体験や思い込みにとらわれること」、もう一つは「目的を見失うこと」です。

例えば、「以前このデザインが好評だったから」「この業種なら、こういう見せ方がいいはず」と考えてしまうことがあります。また、好きな色や書体、参考にしたいWebサイトの雰囲気に影響されることもあるでしょう。

しかし、Webサイトによって伝えたい魅力も、訪れるユーザーも異なります。以前うまくいった方法や、自分が好きなデザインが、必ずしも今回の正解とは限りません。

もう一つは、見た目をきれいに仕上げること自体が目的になってしまうことです。

文字や配色、余白を整えることはもちろん大切です。でも、本当に重要なのは、そのWebサイトを見た人に何を感じてもらい、どんな行動を起こしてほしいのかということです。

例えば、どんなにおしゃれなサイトでも、サービスの魅力が伝わらず、問い合わせや予約につながらなければ、本来の目的を果たしているとはいえません。

つまり、「きれいにつくること」と「選ばれること」は、必ずしも同じではないです。

Q2. デザインの良し悪しを見極める「6つの判断軸」について教えてください

Mana: 新刊『選ばれるデザイン』の中で、デザインの良さと足りなさを見極める「6つの判断軸」を提唱されています。具体的にどのような視点なのか、読者に向けて簡単にご紹介いただけますか?

私が開発したBDQ®(Branding Design Quality)は、デザインを通じて伝えたい情報や魅力をユーザーに届け、選ばれることや体験価値の向上につなげるための6つの判断軸です。

デザインのどこに目を向け、どう良くしていくかを考えるきっかけとなるものです。

例えば、以前よく通っていた、コーヒーに強いこだわりを持つカフェがあったとします。久しぶりに訪れようと思い、リニューアルされたWebサイトを見てみました。ところが、そこでいくつかの違和感を覚えます。

  1. 【独自性】オーナーが大切にしている豆の産地選びや焙煎方法、コーヒーの楽しみ方への深いこだわりが、サイトからは見えてきません。
  2. 【連想性】メインビジュアルにはコーヒーの産地らしい風景が使われていますが、その写真から何を伝えたいのか、どんなカフェなのかがわかりません。
  3. 【差別性】周辺には同じように豆の産地にこだわるカフェが増えています。サイトの写真やデザインも似ており、他店との違いが見えてきません。
  4. 【継続性】ロゴやWebサイトの雰囲気が大きく変わり、以前その店で感じていた魅力が引き継がれていません。馴染みのあるカフェなのに、別の店のように感じます。
  5. 【展開性】PCではきれいに見えるサイトも、スマートフォンでは明朝体の文字が細く、小さすぎて読みづらくなっています。
  6. 【画一性】Webサイトで伝えている世界観と、実際の店舗の空間や看板、メニュー表から受ける印象が一致していません。

このような違和感が重なると、そのカフェが本来持っている魅力が十分に伝わらず、結果として他のカフェを選んでしまうかもしれません。

つまり、一つの「選ばれない」という結果の中に、6つの異なる理由が隠れている可能性があります。

6つの判断軸の役割を簡潔にまとめました。

判断軸

役割

独自性

ブランド本来の価値を、形にする

連想性

見た瞬間に、意味を思い浮かばせる

差別性

比較の中で、違いを見せる

継続性

変化の中でも、価値を残す

展開性

どこで使っても、伝わる状態をつくる

画一性

さまざまな接点で、一つのブランドに見せる

画像出典:『選ばれるデザイン』(ビー・エヌ・エヌ刊)

Q3. 漠然とした違和感を、どうやって具体的な改善につなげればいいですか?

Mana: 「なんだか印象が弱い」といった漠然とした問題でも、実は原因が違うとお聞きしました。例えば「競合と似てしまう」「スマホだと読みにくい」といったよくある悩みは、6つの軸のどれを見直せば解決の糸口が見つかるのでしょうか?

「なんだか印象が弱い」と感じても、その原因は一つとは限りません。

例えば、先ほどのカフェの事例なら、他のカフェと似ていて特徴が感じられないのは「差別性」、オーナーのこだわりが伝わらないのは「独自性」、写真やメッセージからどんなお店なのかイメージできないのは「連想性」の問題かもしれません。

また、スマホで文字が小さくて読みにくければ、「展開性」の問題も考えられます。

大切なのは、最初から原因を一つに決めつけないことです。

例えば、他店のサイトと並べて比べてみる。写真や文章から伝えたい魅力が感じられるか考えてみる。実際にスマホで見て、読みやすさを確認してみる。

6つの判断軸を使って、違和感の理由を一つずつ確かめていく。 そうすることで、「なんとなく良くない」が「ここを直せばもっと良くなる」という具体的な改善につながるのです。

Q4. 実際の制作現場では、この視点をどのように使っていますか?

Mana: 「6つの判断軸」を実際のプロジェクトでどう活かしているのか、イメージを掴みたいです。貴社が手掛けられた事例を交えながら、競合との差別化やロゴ・ブランドブックの制作で「何を基準に判断したのか」を教えていただけますか?

Webサイトをデザインするとき、「背景は何色にしよう」「どんな写真を使おう」「トップページには何を載せよう」と迷うことがあると思います。そんなとき、見た目の好みだけで決めないために必要なのが「コンセプト」です。

例えば、私たちが手がけたGenki Groupの創業50周年プロジェクトでは、以下のプロジェクトコンセプトを立案しました。

「Genki Groupは100年企業へ」
「共に生きた50年。共に生きていく、これからの50年。」

大切にしたのは、社員一人ひとりが50周年を「自分ごと」として感じられること。そして、社外の人たちにも、これからの50年を共に歩んでいくという思いが伝わることです。

そこで重視したのが「連想性」です。

例えば、色を選ぶ際には、社員が普段から目にしているグループのブランドカラーを使いました。ロゴも、既存のシンボルを構成する3つの形を組み替え、みんなが力を合わせる「結束」を表現しています。

Webサイトでも、その色や形を生かしながら、社員のインタビューやグループの歴史、これからの50年に向けたメッセージを掲載しました。

見た瞬間に「自分たちのグループだ」と感じられ、同時に未来への期待も生まれる。そんなデザインを目指したのです。

「なぜこの色なのか」「なぜこの形なのか」。その理由を、見た人に何を感じてほしいかという目的から考える。

Webデザインでも、こうした判断の軸があれば、デザインの方向性に迷いにくくなると思います。

画像出典:『選ばれるデザイン』(ビー・エヌ・エヌ刊)

Q5. 最後に、ご自身のデザインに自信を持ちたい読者へメッセージをお願いします

Mana: 「センスがないから…」と悩む初心者デザイナーや、自分の制作物を客観的に見直す基準を持ちたい方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いいたします。

私は、デザインにセンスはいらないとさえ思っています。

もちろん、感覚や美意識を否定するわけではありません。でも、センスを磨く前に、もっと大切なことがあります。それは、誰のために、何を解決するデザインなのかを知ることです。

自分のデザインに自信が持てないのは、色や形、レイアウトを選んだ理由を、自分自身で説明できないからかもしれません。だとしたら、必要なのは自信を持とうとすることではなく、自信を持てるだけの理由を見つけることです。

そのためには、クライアントと同じ目線に立ち、時にはクライアント以上に、その人たちが抱える問題を考えること。そして、その先にいるユーザーが何を求め、どう感じ、どう行動するのかを考えることです。
私は、Webデザイナーには、もっとWebの外へ出てほしいと思っています。

そこで役立つのが、紹介した6つの判断軸です。この6つの視点でデザインを考え始めると、自然とWebサイトの外に目が向くようになります。

「どうすれば見た目が良くなるか」だけでなく、「どうすればクライアントの課題を解決できるか」。さらには「どうすれば、その先にいるユーザーの心を動かし、選んでもらえるか」。

Webデザインを考えていたはずが、いつの間にか企業の未来や、ユーザーの体験まで考えている。

私は、この視野の広がりこそが、デザイナーにとって大きな成長につながると思っています。

お客さん以上に、お客さんの問題を考える。そして、その先にいるユーザーのことまで考える。

その上でWebデザインをつくる。

Webデザイナーの可能性を、Webの中だけで終わらせないでほしい。そして、そこにこそ、自信を持ってデザインを提案できる理由が生まれるのだと思います。

今回お話を伺った奥野さんの書籍が発売されます!

今回のお話を伺って、「きれいにつくること」と「選ばれること」は必ずしも同じではないという言葉に深く納得しました。実際の制作現場でも、そういった壁にぶつかることはよくありますよね。

また、Webデザインを考えていたはずが、いつの間にか企業の未来やユーザーの体験まで考えているというお話にも強く共感しました。昔、知人にWebデザインの話を熱く語ったとき、「ManaはWebサイトだけじゃなくて、誰かの未来をデザインしているんだね」と言われたことを思い出します。この視点をいつまでも忘れないでいたいですね!

さて、今回インタビューにお答えいただいた奥野さんが提唱する、デザインを客観的に見極めるための「6つの視点」がギュッと詰まった書籍が発売されます!デザインを見る目と、判断を言葉にする力を身につけたい方は、ぜひチェックしてみてくださいね!

書籍情報

『選ばれるデザイン ブランドイメージを見る目が変わる。6つの視点』

約6割の人が、イメージで動く
ブランディング/VI/CI/ロゴ—— デザインは、印象をつくり、ユーザーを動かすもの。何が機能し、何が伝わっていないのか。選ばれるデザインに必要な「見る目」を身につける。ブランディングデザインの現場では、デザイナー、ディレクター、クライアントなど、立場によって「良いデザイン」の基準が異なり、判断が感覚や好みに流れてしまうことがあります。

本書では、そんなデザインイメージを「独自性/連想性/差別性/継続性/展開性/画一性」という6つの視点から捉え直します。ブランディングデザインの新たな入門書といえる、デザイナー・クライアント問わず、デザインを見る目と、判断を言葉にする力が身につく一冊です。

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著者プロフィール

奥野 正次郎
POROROCA代表|ブランド戦略家|クリエイティブディレクター

約20年にわたり、企業や事業のブランド戦略、ブランドコンサルティングを中心に、CI・VI、Web、コミュニケーション設計まで一貫して手がける。これまでに国内外のデザイン賞を多数受賞。 実務と大学教育の経験を通して、デザインがセンスや好みだけで語られることに向き合い、デザインの品質を判断するための指標「BDQ®( Branding Design Quality)」を開発。企業のブランディングに活用し、認知度やブランドイメージの向上につなげている。